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ICC FUKUOKA 2021で設けられたランチタイムのセッションで行われた、注目の産業トレンドのプレゼンテーションの書き起こし記事を4回シリーズでご紹介します。その4「次世代 健康サービス特集」というテーマで登壇したのは、メタジェンの福田 真嗣さん。便から生み出す健康社会の姿についてプレゼンします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 9B
【ランチョン・セッション】プレゼン企画「次世代 健康サービス特集」
Supported by ノバセル
<便から生み出す健康社会の姿とは?>
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
2006年明治大学大学院農学研究科博士課程を修了後、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て2012年より慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授、2019年より同特任教授。2016年より筑波大学医学医療系客員教授、2017年より神奈川県立産業技術総合研究所グループリーダー、2019年よりマレーシア工科大学客員教授、JST ERATO副研究総括を兼任。2013年文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。2015年文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術への顕著な貢献2015」に選定。同年、第1回バイオサイエンスグランプリにて、ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」で最優秀賞を受賞し、株式会社メタジェンを設立。代表取締役社長CEOに就任。専門は腸内環境制御学、統合オミクス科学。著書に「もっとよくわかる!腸内細菌叢 健康と疾患を司る“もう一つの臓器”」(羊土社)。
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その他もチェック! 注目の産業トレンドプレゼンテーション
1. 輸送や点検を担う産業用ドローンで、生活インフラを変えていく「ACSL」
2.「ハチドリ電力」は、実質自然エネルギー100%の電力への切り替えで、地球温暖化を止める選択肢を提供する
3.「暮らす」「働く」を提供して、路上生活の脱出と再出発を支援する「Homedoor」
福田 真嗣さん 皆さん、こんにちは、メタジェンの福田です。ICC小林さんにご指名いただきましたので、12分間、我々の事業についてお話しします。
「便から生み出す健康社会の姿とは?」というタイトルで、ランチョン・セッションにぴったりの話題です(笑)。
我々の事業のコンセプトは、こちらです。
「Ben-efit!」
これは外国人には分からない、英語を使ったダジャレです(笑)。
「便から学べ」ということなのですが、どういうことか説明します。
便は疾患リスク・健康情報が詰まった「茶色い宝石」
私たちのお腹の中には、たくさんの腸内細菌がいます。
この腸内細菌のバランスが乱れると色々な病気になってしまうことが、近年の研究で分かってきています。
大腸がんや炎症性腸疾患などの腸疾患だけではなく、感染症、アレルギー、糖尿病や動脈硬化、さらには脳疾患、自閉症、多発性硬化症、パーキンソン病などにかかる可能性もあります。
一方、腸内細菌のバランスが良い状態だと、驚くべきことに、感染症予防や持久力向上、疲労軽減、睡眠の質向上などにも良い影響を与えていることが分かってきています。
皆さんのお腹の中にいる腸内細菌の情報は、常日頃、便に出てくるのです。
つまり、便の中には皆さんの疾患リスクや健康に関する情報がたくさん含まれているので、我々は敬意を込めて、便を「茶色い宝石」と呼んでいます。
ICCサミットの場でも何度も「茶色い宝石」と言い続けているのですが、この呼び方はいっこうに流行りません(笑)。
しかし、朗報があります!
この5年間、「茶色い宝石」と言い続けたところ、何と商標登録ができました(笑)。
特許庁が、「茶色い宝石」はメタジェンのビジネスだと認めたということです。
最先端のテクノロジーを使って、便の中にある腸内細菌の情報、つまり皆さんの健康に関する情報を取り出します。
その情報を皆さんにフィードバックをすることで、病気を未然に防ぐ事業を行い、病気ゼロ社会を実現したいと考えています。
人によって異なる便中の腸内細菌情報を利用して病気を防ぐ
この事業を達成するため、多くの事業会社と連携しています。
「腸内デザイン共創プロジェクト」といって、腸内環境を適切にデザインすることで病気を予防しよう、健康になろうという取り組みです。
参画企業は食品系メーカーが多いですが、異分野の事業会社とも連携しています。
行っているのは、「腸内環境に基づいたエビデンスベースドヘルスケア事業開発」です。
この「エビデンスベースド」という点が、とても大事です。
皆さん、例えば、配偶者や友人から、「これはすごくいいから、試してみて」とサプリメントやヨーグルトを紹介されて使ってみたけれど、効果がよく分からなかったという経験はないですか?
実は、腸内環境に基づいて効果を発揮するものについては、人によってその効果に違いがあることが分かってきています。
これは、ネズミの大腸を輪切りにして免疫染色をした画像です。
外側が腸の組織で、内側の緑の部分が腸内細菌、青く見えるのは未消化物です。
ネズミと同じように、我々ヒトの大腸にもたくさんの腸内細菌が詰まっており、食物繊維など、私たちが食べたものの未消化物を腸内細菌が分解し、色々な物質を作っています。
腸内細菌に作られた物質が腸から吸収され、全身を巡ります。
ですから皆さんが今食べている食事を腸内細菌がさらに分解し、色々なものが作り出され、それが皆さんの体に供給されるのです。
ここでもう一つ、大事なポイントがあります。
腸内細菌が住み着いている腸管の中は、人間の体の外の環境とつながっている体外環境なのです。
つまり、口から肛門までは体の外側だということです。
ストローやドーナツの内側の部分と同じですね。
ですので、皆さんのお腹に住む腸内細菌の種類やバランスは、人によって違います。
皆さんは今この会場で同じお弁当を食べていますが、皆さんの体に100%同じ成分が供給されるかと言うと、答えはNOです。
この差はこれまで個人差と言われてきたのですが、実は腸内細菌の種類やバランスの違いによるものだということが近年の研究で分かってきました。
そしてこの違いは、実は食べ物だけではなく、薬の効き方にも影響があることが分かっています。
ですから我々は、お腹の中の情報に基づく、層別化医療・ヘルスケア産業を創りたいのです。
我々のビジョンは、病気ゼロ社会の実現です。
100人いれば100人が健康になる社会を、実現しなければいけないと考えています。
腸内環境情報を分析するコアテクノロジー
我々の実績と会社概要を簡単に紹介します。
2015年の創業から、連携企業はどんどん増え、今は40の事業会社と取り組みをしています。
売上も5期連続増収で黒字を達成しており、「茶色い宝石®」関連事業という唯一無二の事業で、売上を上げています。
私たちのコアテクノロジーは、メタボロゲノミクス®という分析技術です。
そしてもう一つ、皆さんの便を常温で保管する特許技術を開発したのも大事なポイントです。
特許の名称は「糞便の保存方法」で、つまり、キットに便を保管する特許なのですが、これは非常に重要なので後ほど説明します。
大切な誰かを「便」で救う?
私は、2017年のICCサミット KYOTOのカタパルト・グランプリで優勝させていただきました。
▶総勢24社登壇!注目ベンチャーの祭典「カタパルト・グランプリ」栄えある第2回の優勝企業は…!?
そして2021年、「茶色い宝石」の価値をさらに高めたいと考え、色々試行錯誤しています。
ランチョン・セッションで、こんなに大きな便の画像を出すのは僕だけだと思います(笑)。
今は皆さん自身の健康に直接つながるような事業を行っていますが、仮に、自分の健康だけではなく、大切な誰かを便によって救うことができれば、便の価値がさらに高まるのではないかと考えています。
つまり、便が、光り輝く美しい宝石に本当に変わるのではないかと思っています。
そこで、これを実現するために、便を薬に変えようと考えています。
突拍子もないことに聞こえるかもしれませんが、実際にできるのです。
潰瘍性大腸炎治療の臨床試験で便移植に有効性
皆さん、難病指定されている潰瘍性大腸炎という腸の病気をご存知でしょうか?
▶潰瘍性大腸炎(指定難病97)(難病医学研究財団/難病情報センター)
原因不明の特定疾患ですが、国内でも20万人以上の患者さんがいて、最も患者数の多い特定疾患です。
安倍 晋三元総理も、この病気で辞任されたと言われています。
治療薬として炎症を抑える対症療法の薬があり、国内で1,500億円、世界で7,000億円規模の市場があります。
この病気に対し、臨床試験で薬ではなく便を移植する便微生物叢移植療法(便移植)を行ったところ、高い治療効果が得られることが報告されました。
便移植にはまず、健康な人の便を生理食塩水に溶かしてフィルターでろ過し、茶色い便ジュースを作ります。
それを、大腸内視鏡を使って患者さんのお腹の中に入れ、腸内細菌を、健康な人のものとそっくり入れ替える方法です。
便移植によって潰瘍性大腸炎の患者さんのうち82.4%がその症状が改善し、さらに35.5%の方が寛解にまで至ったという報告があります。
▶世界初!潰瘍性大腸炎に対する抗生剤併用便移植療法の有効性を確認~新たな腸内細菌療法の展開へ ~(PR TIMES)
薬と同程度、あるいはそれ以上の効果が便にはあった、つまり腸内細菌が疾患の治療に役立ったということです。
メタジェンの特許技術で「便を薬に」
先ほど、腸内環境は人によって違うという話をしました。
では、もし皆さんがこのような病気になってしまったら、誰の便を使えばいいのでしょうか?
実は、親や子供、配偶者よりも、兄弟姉妹から便をもらって移植するほうが、治療効果が高いことがわかってきました。
▶兄弟、同世代のドナーが便移植療法の長期治療効果を高める(順天堂NEWS)
ですから皆さん、兄弟姉妹を大事にしてください。
しかし、一人っ子はどうすればいいでしょうか?
ここで、先ほど話した、我々の特許技術が登場するのです!
皆さんが健康な時の便を保管しておき、将来もしも病気になった際には、その便を活用すればいいのです。
便を薬として使うことができれば、まさに「茶色い宝石®」になるわけです。
病気ゼロ社会実現に向けてグループで展開
我々は病気ゼロ社会実現のために、グループ企業を展開しています。
我々メタジェンは、ヘルスケアとR&Dを行っています。
2020年に、創薬と医療部門を担う、メタジェンセラピューティクスという会社を創りました。
▶株式会社メタジェン、子会社「メタジェンセラピューティクス」を設立
〜腸内環境情報を基盤とした創薬事業を開始し、 腸内細菌創薬プラットフォーマーを目指す〜(PR TIMES)
さらに海外展開のため、シンガポールに、メタジェンシンガポールを設立し、現在この3社で事業を行っています。
▶株式会社メタジェン、海外子会社「メタジェンシンガポール」を設立
~世界の技術シーズを取り入れた新たなアプローチで「腸内デザイン」事業の国際展開を開始~(PR TIMES)
便から世界を健康に!
最後になりますが、我々は、茶色い宝石に基づく新たな医療・ヘルスケアの創出を目指しています。
この海は、ブルーでもレッドでもなく、ブラウンオーシャンです。
茶色い海には、あまり外敵はいなそうですが、溺れたら大変なことになる海です。
今、地球上には77億人がいて、生きるために食べ物を食べています。
食べ物を食べるということは、当然、全世界で便が作られて、そして捨てられています。
ですがこの便には、皆さんの健康あるいは疾患リスクの情報、さらには将来薬になるかもしれない微生物資源が眠っているのです。
ですから我々は、先ほどのキットを使って、これらの便を日本に運び、我々のテクノロジーを使って価値ある情報に変換して、皆さんにフィードバックすることで、便から世界を健康にしたいと思っています。
これには、エビデンスがあります。
アメリカではこの5年で、腸内細菌を活用した医療やヘルスケアを行うバイオベンチャーが既に100社以上設立されており、1,000億円以上の資金が投入されています。
▶【業界分析:マイクロバイオーム】腸内フローラ市場の可能性。欧米での基盤研究の進展と、ベンチャー企業の取組 2017.11.05(ミーミル)
つまり、ブラウンオーシャン大航海時代は、もう既に始まっているのです!
BaaS、Ben as a Serviceです。
我々メタジェン社は、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」「産業と技術革新の基盤を作ろう」を、「茶色い宝石®」で実現したいと考えています。
興味のある方はぜひ、ご連絡をいただければと思います。
以上です、ご清聴ありがとうございました。
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新企画のランチョン・セッションで、社会の変化に応える最新テクノロジーにキャッチアップ【ICC FUKUOKA 2021レポート】
(終)
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編集チーム:編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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